ブログ・コラム 札幌の税理士 溝江 諭 の 『一筆啓上』

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『民主党による税制改正』 その6 法人税改革

 札幌市豊平区の 税理士 溝江諭(みぞえさとし) です。
 
 民主党のマニフェストではごく僅かしか触れられていない税制。そこで、より詳しく記載されている民主党の「政策集 INDEX 2009」から税制改正についての政策を見ていきましょう。
 
『民主党による税制改正』その6 法人税改革 です。
 
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 これまでお伝えした内容は以下のとおりです。
 
1回目・・・「納税者の視点に立った税制へ」という題で、「税制改正過程の抜本改革」「税・社会保障共通番号の導入」「納税者権利憲章の制定と更正期間の見直し」「国税不服審判のあり方の見直し」
 
2回目・・・「所得税改革の推進」という題で、「所得控除の整理、税額控除、手当等への切り替え」「給与所得控除の見直し」
 
3回目・・・「年金課税の見直し」と「住宅ローン減税等」
 
4回目・・・「給付付き税額控除制度の導入」、「金融所得課税改革の推進」
 
5回目・・・「消費税改革の推進」
 
 
1 法人税改革の推進
 
 「租税特別措置の抜本的な見直しを行いますが、これを進めて課税ベースが拡大した際には、企業の国際的な競争力の維持・向上などを勘案しつつ、法人税率を見直していきます。
 
 なお、租税特別措置の見直しにあたっては、研究開発の促進など真に必要な措置については、現在の時限措置から恒久措置へと転換していきます。また、温暖化を中心とする環境対策、雇用の維持・拡大、自治体の工夫や努力などによる地域活性化などの重要課題への対応を法人税制の中で図ることも検討します。
 
 欠損金の繰戻還付制度は凍結を解除します。」
  
 「租税特別措置について、減税措置の適用状況、政策評価等を明らかにした上で、恒久化あるいは廃止の方向性を明確にする「租税特別措置透明化法」を制定します。
 
 特定の企業や団体が本来払うはずの税金を減免される点で、租税特別措置(租特)は実質的な補助金であると言えます。しかし、民主党の調査の結果、税務当局も要求官庁も各租特の必要性や効果を十分に検証しておらず、国民への説明責任を全く果たしていない実態が浮かび上がってきました。
 
 租特の透明化を進める中で、租特を含めた実質的な負担水準を明らかにし、それにより課税ベースが拡大した場合には、法人税率の水準を見直していきます。」
 
 以上の法人税政策をまとめると次のようになります。
 
1 租税特別措置の抜本的な見直しを行うこと。
2 租税特別措置の恒久化あるいは廃止の方向性を明確にする「租税特別措置透明化法」を制定すること。
3 租税特別措置を含めた実質的な法人税課税の負担水準を明らかにすること。
4 それにより課税ベースが拡大した場合には、法人税率を引き下げること。
5 欠損金の繰戻還付制度は凍結すること。

 
 このうち、最後の欠損金の繰戻還付制度の凍結は、既に自民党政権下で、中小法人等に限り、本年(平成21年2月以後終了事業年度)から解除されています(注1)。なお、この凍結制度は、平成4年4月1日以後に生じた青色欠損金額につき欠損金の繰戻還付制度を特別な場合(設立5年以内の中小法人等)を除き適用しないというものでした。
 
 上記の4の税率の見直しは、経済界等からの「日本の法人課税の実効税率(注2)は世界一高い」という不平不満に対する民主党としての回答と言えます。すなわち、本当に日本の税率は高いのかどうかを租税特別措置による減税や増税を除いたところで再計算し、実質的な負担水準を明らかにし、もし高いのであれば租税特別措置の減税見直しにより課税ベースを拡大させ、その分の税率引き下げを検討しようというものです。
 
 この背景として、民主党は次のような事実を考慮しているのでしょう。
 
1 日本では、確かに、企業の所得に対する実効税率は40.87%と高い(注3)。
 
2 しかし、国民所得に対する法人の租税負担率は4.8%で、スウェーデン5.0%やイギリス5.1%より低い(注4)。
 
3 さらに、国民所得に対する国民負担率(租税負担率+社会保険料負担率)は38.9%で、世界の先進国の中ではアメリカの34.7%に次いで低く、イギリス、ドイツで50%前後、フランスやスウェーデンでは62%を超えている(注5)。
 
4 法人課税においては、租税特別措置の減税により、課税ベース(所得金額)の把握におおきな穴が空いており、それが実効税率の高止まりを生んでいる。→この穴のことを「課税ベースの浸食」といいます。
 
 これらの実情を見ると、わが国の法人税率は決して高いとはいえません。そのことより、租税特別措置による「課税ベースの浸食」が課税の公平を阻害しているという事実こそが改善すべき点だというわけです。民主党はここから今後3年間ほどかけて1.3兆円ほどの財源捻出を図ろうとしているようです。
 
 適用期限を定めない恒久立法に対し、適用期限の定めがある法律を時限立法といいますが、租税特別措置法では全部で310項目のうち、126項目が時限立法で、特定の政策を後押しするために設けられました。しかし、それにも関わらず、時限立法としての租税特別措置の多くがその必要性や産み出した効果を十分に検証されることもなく、延長されてきたというのがこれまでの実態のようです。そのため民主党では、個々の租税特別措置について減税措置の適用状況、政策評価等を明らかにした上で、恒久化あるいは廃止という方向性を明確にする「租税特別措置透明化法」を制定するとしているのです。この新法の制定は今後の基準値となるものですから、ぜひ実現してもらいたいものです。
 
 ところで、、現在の租税特別措置にはどのようなものがあるのでしょうか、見てみましょう。
 
 読売新聞(2009..8.7)によると、「財務省試算では、08年度の租税特別措置は減税分が約7.5兆円、増税分が約2.3兆円で、差し引き約5.2兆円の減税」とされ、主要な減税措置として次のものが記載されています(注6)。
 
1石油化学製品の原材料ナフサへの免税 3兆7,890億円
2住 宅 減 税                  8,240億円
3法人の試験研究費の特別控除        6,510億円
4確定申告を要しない配当所得         3,360億円
5中小企業投資促進の特別控除        2,560億円
6退職年金積立金に対する法人税課税停止 1,560億円
7肉用牛売却による農業所得の課税の特例  130億円
8その他約300項目で          約1兆4,860億円
 

 
 このように、租税特別措置には法人課税だけではなく、個人課税に関するものも存在します。例えば、上記のうち、住宅減税や配当所得に関する項目です。これだけでも約1兆1,600億円が個人課税の減税分です。民主党が今後捻出しようとしている1.3兆円には個人課税の分も含むのかどうかは必ずしも明らかではありません。
 
 以上の租税特別措置のうち、最大の減税規模となる石油化学製品の原材料ナフサへの免税 3兆7,890億円については、特別措置の継続が決定済みのようです。そうなると、残り3兆722億円の特別措置から1.3兆円を捻出せざるを得ません。これにより、これまで既得権益として減税を受けていた団体、法人等の大きな反発が予想されますので、民主党は今後かなり困難な作業を強いられそうです。上記の他にも色々な租税特別措置があるようですが、民主党には課税の公平を推進するという観点から、十分に精査の上、臆することなく、改善に取組んでもらいたいものです。
 
 なお、国税の租税特別措置と同様な措置が地方税にもあります。「非課税等特例措置」といわれるもので、338項目で1兆3千億円ほどの減収要因となっています。民主党は、これについては触れていませんがおそらくここにも手を加えることになるでしょう。
 
 日本の法人課税はどうあるべきか。
 
 そのうちの実効税率だけを取り上げると法人課税の実効税率をもっと引き下げるべきだと私は思っています。輸出企業の外国企業との間における国際競争力の強化だけがその理由ではありません。国内だけで営業する国内企業の体質強化のためにも、財務状況の強化に結びつく内部留保を高める必要があること、低下している労働分配率を上昇させ雇用の確保や国内需要の増加につなげること、役員報酬の増額を法人の節税策として利用できなくすること(法人課税の高税率と個人課税の低税率の差を利用して行われる節税)などのためですそのためには、課税ベースを侵食しているあらゆる原因を洗い出し、除去する必要があります。そのひとつが租税特別措置の見直しなのです。この他にも、受取配当等の益金不算入の見直し、タックスヘブン、移転価格税制その他の課税逃れの手法に対する規制強化など、課税の公平の実現と税収の確実な確保のため、今後果たすべき役割を十分考慮した税制改正が求められます。
 
  
 皆さんはどう考えますか?
  
 
 次回は、
『民主党による税制改正』 その7 
「中小企業支援税制等」
を取り上げます。
 
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 その他の『ちょっとためになる情報』は、次のサイトの「お知らせ」と「ブログ」でどうぞ!!
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 See you next !
 
 
(注1)欠損金の繰戻還付制度の凍結解除(国税庁)
 
(注2)実効税率(SMBCコンサルタント)
 
(注3)世界各国の法人税税率の一覧(WEB金融新聞)
 
(注4)租税負担率の国際比較(財務省)
 
(注5)国民負担率の国際比較(財務省)
 
(注6)読売新聞(2009.8.7)
 
 
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  税理士・社会保険労務士・行政書士 溝江 諭 KSC会計事務所
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      札幌学院大学 客員教授 税務会計論担当(学部)
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